





【フェートン号事件関係主要巻】
左上から 第256巻 第257巻 第258 巻第259 巻第260巻
通航一覧
『通航一覧』は、江戸幕府が編纂した最大規模の対外関係史料集である。
鎖国時代の日本において、海外との窓口は長崎に限られていた。オランダ船の来航、唐船の入港、漂流民の送還、異国船の接近、海外の戦争や政変など、世界に関する情報は長崎に集まり、長崎奉行所を通じて幕府へ報告された。
十九世紀初頭になると、日本周辺にはロシア船やイギリス船が頻繁に現れるようになった。ラクスマン来航、レザノフ来航、文化露寇、フェートン号事件など、日本はこれまで経験したことのない国際的緊張の時代を迎える。
こうした情勢の中で、幕府は長崎を中心に蓄積された膨大な対外記録を整理し、後世に伝えるための編纂事業を開始した。それが『通航一覧』である。
巨大な国家編纂事業
『通航一覧』は一人の著者が執筆した歴史書ではない。
長崎奉行所文書、オランダ商館関係資料、諸藩からの報告書、漂流民の供述書、異国船来航記録など、多数の原史料を集め、それらを年代順に編集して作られた史料集である。
その収録範囲は広大で、日本近海に現れた外国船の記録だけではない。
海外諸国の動向、交易の実態、漂流民の帰還、外交交渉、海防問題など、江戸時代後期の日本が直面した国際情勢が克明に記録されている。
現代でいえば、外務省外交史料館、防衛省戦史資料、海上保安庁記録、海外ニュースアーカイブを統合したような存在である。
失われた史料の保存庫
『通航一覧』の価値は、単に情報量が多いことではない。
編纂に使用された原史料の多くは、その後散逸あるいは焼失している。
今日では原本が失われ、『通航一覧』によってのみ伝えられている記事も少なくない。
その意味で『通航一覧』は史料集であると同時に、失われた史料群の保存庫でもある。
江戸後期日本の対外関係史を研究する者にとって、欠くことのできない基本史料の一つとされる理由もそこにある。
フェートン号事件研究と通航一覧
フェートン号事件研究においても、『通航一覧』は最重要史料の一つである。
野母遠見番からの第一報。
神崎への曳航。
長崎奉行所の対応。
深堀藩の火船準備。
大村藩・福岡藩の出動。
事件後の処分。
これらを時系列で追跡するうえで、『通航一覧』は欠かすことができない。
本サイトでは、フェートン号事件に関係する主要巻を掲載し、原典PDF・翻刻・現代語訳・解説を順次公開していく。